Mr.P's Shuffle

【本日の一枚】

Ben Sidran / Mr. P’s Shuffle (1996)

Genre: Smooth Jazz etc.

Mr. P's Shuffle

時代をリードしたスタイリッシュ、かつオシャレで知的な捻りの効いたポップ・ジャズを楽しみたい、そんな人にオススメのシンガー/ピアニストがこのBen Sidran。60年代にはあのSteve MillerBoz Scaggsとともにthe Ardellsというバンド活動をしたりしています。その後、Steve Miller Bandの一員としてキーボード、ソングライティングなどで活躍、70年代初頭には合衆国におけるアフリカン・アメリカンの文化と音楽というテーマで博士号を取得するなど幅の広い教養を持ち合わせている側面も見せています。1972年を始まりとしながらMose Allisonのようなクールで多少スウィング・スタイルの入ったような曲調の多くのアルバムをリリースしています。後のアルバムではエレクトリックな味付けやシンセによる装飾も多々見られますが、初期の彼はアクースティック・ベースでより歌詞に重きを置いていたように思えます。

 Mose Allison絡みでVan Morrisonとのコラボレーションを見せたり、Georgie Fameなどのプロデュースをしたりしている90年代以降には、Go Jazzレーベルを設立して話題の的となり、現在は自らの姓を逆につづった(敬愛するマイルス・デイヴィスの曲名でもある)Nardisを本拠地として活動中です。そんな「ドクター・ジャズ」こと彼の96年リリースのアルバムがこれ。
 Solid piano jazz with a lounge feelとでも言えばいいでしょうか。60年代彼が実際に演奏していたMr. P’s Placeというクラブ(今は2代目が引き継いでいるそう)の2代目オーナーから演奏をまたしてくれないかという依頼を受けたのがこのアルバムの制作のきっかけになったとかならないとか。実際に引き受けて、親しい友人たちなんかを招待しながら定期的に演奏するのがとてもたのしかったようですね。Mid-Westerner としての確固とした価値観である“Be Yourself, Enjoy Yourself, Express yourself”を地でいくような気持ちで溢れていたんでしょう。そんな楽しげで、力の抜けたスナップショット的な演奏がこのアルバムには込められています。何曲かでは息子のLeoのドラムも聴けます。実際にそのクラブで演奏しているような臨場感に溢れ、幾分郷愁を誘う・・・でも最高に心を開放しているような感覚が心地良いです。
 ジャズを「生き方」と断言するBen(もちろんPop Musicの中にも「良いもの」はあるという前提で)、彼は心で音楽と対話しています。心をオープンにお酒を片手に、さらりさらりと・・・そんな感じでしょうか。

【Performers】
Richard Davis - Bass
Roscoe Mitchell - Saxophone (Soprano)
Frank Morgan - Saxophone (Alto)
Ricky Peterson - Organ
Phil Upchurch - Bass, Guitar
Margaret Cox - Vocals
Howard Levy - Harmonica, Vocals (background)
Alejo Poveda - Percussion
Ben Sidran - Piano, Vocals
Leo Sidran - Drums
Clyde Stubblefield - Drums