Beauty Will Rise

【本日の一枚】

Steven Curtis Chapman / Beauty Will Rise (2009)

Beauty Will Rise

Out of these ashes beauty will rise

昨日到着してからずっとヘヴィーローテーション。。。。

 昨年の彼に起こった悲しい出来事から約1年半。待ちに待った新作が到着。あえてサンプルも先行シングルも聴かず、どんな形になるかを想像してこの何ヶ月かを過ごしてきた。

 到着した「音」は、想像通りが半分(Eric Claptonの“Tears In Heaven”なんかの路線を想像していた)、想像を超えていた部分が半分。

まず驚かされたのがそのプロダクション。何と生々しい音だろうか。歌から歌へSCCの魂が込められており、SCCの特徴である70sスタイルのLight Rockとストリングスを効果的に絡めたようなPop / Worship Soundがシンクロしているようなイメージはほぼなく、気取りのないアクースティック・ギターやピアノ、そして曲によってはメランコリックなチェロという最低限の音がただそこにあり主導しているというような、優しく控えめな作りにはただただ驚嘆。(その中でもオーケストレーションに関してはいつも以上に重視していて、装飾的というよりは意図的に使用しているような印象を持った。)そう、ここには過去のアルバムを一緒に作り上げたBrown BanisterやPhil Naishといった大御所達の音とは正反対のまさに「生」の音が存在している。(後で知ったのだが、今回のアルバム、Michael W. Smithとのツアー中にホテルの部屋やツアーの楽屋など彼らがここと思ったところはどこでも使ってのレコーディングだったらしい。)

 歌詞には、ベースに当然のことながら今回の悲劇が横たわっているのだが、ただ単にそこにとどまらず、“HOPE”が絡みあいつつ同時に存在している。曲順にも注目したい。最後に#12“Spring Is Coming”を持ってきているところなんかにはSCCの現在の気持ちが大きく表れているような気がする。The Children Of The World International Children’s Choirのコーラスをフィーチュアしているが、その声に悲しみも感じつつ、希望も感じ・・。SCCのこれからへ向けた決意のようなものが表現されているのでは?

 以下、楽曲の中で特に印象深い曲を何曲かピックアップしてみる。

オープニングを飾る#1“Heaven Is The Face”は、大きな悲しみや痛みの上に、天国は亡き子とともにこんな風に存在しているに違いないとの気持を率直に表現している。聴くたびに違ったイメージを持て、より深く歌詞の中へと吸い込まれる曲である。♪Heaven is the place where she calls my name. Says, “daddy please come play with me for a while.”とか、♪Heaven is a sweet, maple syrup kiss and a thousand other little things I miss with her gone.なんて下りでは、不覚にもグッときて・・。SCC曰く、「ただ単に自分の心を注いだ」曲とのこと。

 タイトルトラック#2“Beauty Will Rise”は、混乱の中での希望について歌っている。四川大震災があった時、Chapman家は中国(上海)にいて、その時は彼らにできる最大のこととして、被災した人々のために祈り続けたそう。そのわずか九日後に娘であるMaria Sueが不幸な事故に出会ったという話は、今回初めて知りえたことであった。彼と彼の家族を襲った大震災を経験することでSCC自身、より深く本当の意味で四川大震災や被災した人々に対して祈りを続けることが出来るようになったとのこと。そんな気持ちがこの歌には思い切り表現されているように思える。四川大震災に襲われた中国の村の断層を背にしたSCCが両手を天に伸ばしているアルバムカバーも、そんな背景を知ると印象深い。SCC自身が、神が瓦礫の中からもたらすだろう“Beauty”そのものを表現しているようにも見えるし、神への賛美を自分はギターと歌で表現するという意思表示のようにも取れる。

 #3“SEE”の背景にはCDケースの中(CDを固定する部分の裏)に描かれている絵が深く関係している。その絵は、Mariaが亡くなった次の朝、病院から家にmemorial serviceのための衣服を取りに家に戻った際に、いつもMariaやその兄弟が絵を描くために使っていた机に載っていたものだそうだ。普段から絵を描いたり、ハサミで切り取ったり、それを糊で貼り付けたりするのがMariaの大好きなことだったらしいのだが、いつもだと完成した絵には例えば“I love mom.”とか“I love dad.”という言葉と自分の“Maria”という名前がサインされていたということだが、この絵にはそのような記述はなく、ただ“SEE”と書かれていた・・・。これを見つけたSCCはすでにどうしようもない位に号泣していたそうなのだが、神様が与えてくれたものだということと、Maria自身が・・・これは原文で書いたほうがいいと思うので・・“I know you are waiting to see something, but see I am okay and I am where you said. It is okay.”との言葉を残してくれたんだということを深く信じたそうだ。また、実際に絵を見てもらうと分かるのだが、色が入れられていたのは6枚ある花びらのうちの一枚だけである。彼には6人の子供がいるのだが、その絵の様子からSCCは、Mariaは神様から色をもらったんだ、残りの私たちはこれからいただくんだというように考えたという話もしている。この話を胸に、歌詞を熟読してみることをオススメする。

 #4“Just Have To Wait”はMariaに再び会いたいという気持ちを素直に、誠実に叩きつけている。SCCを襲った不幸の後、最初に書いた曲だそう。

 #8“January 20th”はMariaが初めて神様を自分の救世主として受け入れた日なんだそう。そのわずか数ヵ月後に神様の元へと旅立ったというのは何とも胸に迫る話である。

このアルバムがSCCの最高傑作と呼べるのかは、現時点では判断がつかない。あまりにもパーソナルな力に満ち溢れているから。ただSCCにとって、今後の音楽活動を再開するにあたってどうしても必要だったアルバムであることは間違いない。

私にとっても忘れられないアルバムになりそうです。

Steven Curtis Chapman - Behind "Beauty Will Rise"

Steven Curtis Chapman "Heaven Is The Face"

◆Web Site: http://www.stevencurtischapman.com/
MYSPACE: http://www.myspace.com/stevencurtischapman
◆showHOPE: http://www.showhope.org/
◆Maria’s Big House Of Hope: http://www.showhope.org/OrphanCare/MariasBigHouseofHope.aspx
◆Maria’s Big House Of Hope (Video): http://blog.showhope.org/?p=321