All Dressed Up

 ふと思ったのだが、俗に「名盤」と呼ばれるアルバムっていうのはジャンルを超えて共通するのは、その「独自性」であり「メッセージ性」であると思う。一聴して「これは〜!」とすぐに分かってしまう構成/声質/メロディというのはそのアーティスト自身の言わば「宝物」であり、我々一般リスナーはそれに追随したり、逆に非難したりする。その曲の「メロディ」にメッセージを見出し、希望や悲哀にくれることもあればそこに乗る「歌詞」に共感したり泣き叫んだりすることもある。ハタマタそこに存在する「雰囲気」というか、その曲の持つ「色」に魅せられたり嘆いたりすることもあるだろう。これが後世まで残る「名盤」としての「資質」だと思った。それに対して冠に「幻の」とつく場合は、また一味違ってくるのだろう。思うにメロディ重視のAORやCCMの場合、その一曲目のインパクトが物を言っている場合がある。1曲目の衝撃があまりにも強く、それがそのアーティストの「色」を決めてしまっている例がそれだ。さらにそのアルバムのプレス数が少なかったり、すぐに廃盤になっていたり、版権の関係なんかが絡んで再発が難しい場合、付加価値は倍増する。それ故、個人的な趣向が強く反映されていたり、ある意味「クセ」のあるアーティストが多い気がする。まあ発売された「時代」というのも大きな要因かもしれない。「もう何年、早かったら・・」というのはよく聴かれるレビューである。だからといって貴重盤だから全てが自分にとって「素晴らしい」ものになる訳ではない。自分にとっての「名盤」をしっかりと見極めて、流されないようにしなきゃなと、最近「Rarities」物に触れる機会が何故か多く、そんなことをふと考えてしまった次第である。

 そんな中で最近購入したこの一枚は一曲目のインパクト、全体の構成力、参加メンバーの豪華さ、声質などどれをとっても私にとっては「一級品」と呼べる。そんな一枚を紹介したい。
【本日の一枚】はDavid Robertsの「All Dressed Up」である。一度はCDで再発されたのだが、瞬く間に入手困難になり、この夏ついに待望の再発となったCDである。(アナログはそんな高くないのが笑えるが)
 アメリカ生まれのカナダ人シンガー・ソングライターであり、これが彼唯一の作品。2枚目の話もあったようだが、もろもろの事情で流れてしまったらしい。その後はCMやTVの仕事(これがメインらしい)や他のアーティストに曲を提供したりという「お決まり」のパターン。そんな彼が他のアーティストに提供した中で一際輝きをもっている楽曲が「Drivin' Wheels」。オーストラリアのジミー・バーンズが歌った楽曲である。ジャーニーのジョナサン・ケインとの共作である。アルバムに話を戻すが、TOTO〜AIRPLAY関連のミュージシャンが参加しているので、その流れを感じ取れる楽曲が多く、非常にクオリティが高い。彼の歌声も若干あぶなっかしい面も聴かれるのだが、それはそれで爽やかで耳さわりが良い。しかしながら、その中で一際このアルバムが「名盤」と呼ばれる所以になっていると思われるのは、その参加アーティストの力ではなく、彼等の力を借りて自らのポテンシャルを最大限に生かしきっている彼自身のメロディセンスであろう。純粋(?)にAOR然とはしていないとは思うが(むしろジャズ的なアプローチなども聴かれる。ジェイ・グレイドンが関わった成果か?)、そこが幅広いファン層に受け入れられる(メロディ重視派ではあるが)理由になっているのだろう。このリイシューをきっかけに、今一度「表舞台」に「彼自身」がALL DRESSED UPな状態で出てきて欲しい。

【到着】
◆Robin Beck / Do You Miss Me (1)
◆Steve Ellis / The LAST ANGRY MAN (2)
◆John Farnham / AGE OF REASON (3)

(1)ドゥ・ユー・ミス・ミー
(2)The Last Angry Man
(3)Age of Reason