戦場カメラマンの唄

不覚である。
戦場カメラマンであり、フリーライター、さらには漫画家西原理恵子さんの夫でもあるカモちゃんこと、鴨志田穣さんが亡くなっていたことを不覚にも最近知った。
(こちらのサイトでお別れの会の様子などが分かります。
・・・http://www.lennus.com/blog/archives/2007/04/kamoshida_san.html

彼を知ったのはもう随分前になる。西原さんの描く(書く)カモちゃんの姿が強烈で、それこそ食いつくように読み漁った記憶がある。今とは全く異なる環境下で何故あれほどまでに魅かれたのか・・。

今回彼の訃報を1年以上経って知ったのを機会に、彼の著作・西原さんなどとの共作など全ての作品を読み直している。

以前文中にて彼が全身から放射していたオーラや彼が特に異国の地にて体験していたことを読んだ時は、自分が同じことをできないでいる「悔しさ」や自分を彼に投射させているのに気づく「憧れ」、そんな単純な動機が大きな比重を占めていたように思える。

今回読み返したり、その後の彼の人生を知るにつけ、彼の純粋さ・まっすぐさにますます魅かれ、それゆえに悩む・お酒に走った彼の気持に胸が締め付けられた。そして彼がそれぞれのときに何を考えていたか、それを出来る限り考えながら読み進めていると、晩年の彼に変化が見受けられた気がする。

今、「変化」という言葉を使ったが、西原さんの漫画でも分かるように、それは彼がもともと持っていたもの。それを死の間際になって多く表面に出し始めていたように思える。そのときの彼の葛藤の様子、また西原さんの心の強さに衝撃を受けた。「映像」から「文章」へそして西原さんとのラストコラボレーションである「戦場カメラマンの唄」の詞(詩)の作成へと密度の濃さに変わりはないが、純粋で真っ直ぐで、だからこそ周りとの衝突を引き起こしたりする彼の生き様がどんどんろ過され、最終的に我々にも分かりやすい形で表面化していった・・とでも言えるだろうか?

今回西原さんの著作もかなりの数読んだのだが、高校の同級生だった友達が漫画家として現在活躍しており、西原さんともお知り合いであることに今回気づき、さらなる感銘を受けた。

彼に会って東南アジアの素晴らしさを教えられ、彼に会って人間の素晴らしさを深く考えるようになり、彼に会って人を愛することの深さを教えられた。ずるさやごまかしの中にいる連中、自分中心でしか物事を考えられない連中に牙を向き、同時に愛情も注いでいる、そんな彼には到底なれそうもないけども、そう、彼によって私自身、あこがれだけで接していた当時から少しずつ自分の人生転換をしていることにも気づかされた。今の自分は、それによって良い方向へ行っているかはわからないけども、最終的に自分自身が胸をはって「生きてたよ」と言える人生にしていこうと・・。ずるい生き方だけはしたくない、今回は改めて教えられた。カモちゃん、ありがと。

【本日の一枚】

戦場カメラマンの唄 / 鴨志田穣(作詞)

鴨志田穣・西原理恵子ラストコラボレーション 戦場カメラマンの唄

CDブック仕様になっており、西原さんが絵を書き下ろしている。全5曲。鴨志田さんが作詞したものに曲をつけたり、その詩からインスパイアされたメロディ(要はインスト)を作ったりされている。作曲はTHEATRE BROOK、SOI、大工原亨、おおはた雄一の面々。その他、勝谷誠彦ゲッツ板谷佐藤タイジ、SOIによる寄稿もとてもあったかくて必読。音楽的にどうという判断は置いておき、彼の書いた詩(詞ではない、勝谷さんもそう言ってるが)がとてつもなくせつない。そしてデッカイ愛情を感じられる。彼らの著作に一度でも触れた経験がある方には分かってもらえるのでは?